平成29年6月23日、国税庁は、現時点で考えられる10年後の税務行政をイメージした「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を公表しました。
ん?どういうこと?
何をするの?
資料によると、どうやら、e-Tax(イータックス:国税庁が運営する、国税に係る申告・申請・納税に係る オンラインサービス)の使い勝手を良くしたり、データの基盤をしっかりとさせるとか。
また、AI(人工知能)技術などを取り入れ、税金を払う人のニーズに寄り添っていくことで「スマート税務行政」の実現化をめざしている姿だそうですよ。
え、スマートに税収したいってこと?
いやいや、それだけではないようです。
具体的にどんなことをしようとしているのか?
今回は、国税庁の「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を参考に、中でも、AI人工知能にしてもらう仕事について簡単にまとめてみました!
AI人工知能にしてもらう2つの税務の仕事
税務署に行くことありますか?
普通の会社員の方は、まず、行くことはないと思いますが、このようなデータがあります。
日本の人口は、1億2679万人(平成29年2月1日確定)
15歳未満人口は 1571万6千人なので、確定申告の可能性が高い15歳以上の人口は、1億1,108万人です。
15歳以上の人口で区切った理由は、最近将棋界で話題になった藤井聡太四段(現在15歳ですが、連勝記録時当時は14歳でしたね。)のような15歳未満でも所得のある方はいますが、ここでは、15歳未満で所得がある人はごくわずかではということで、15歳以上で区切ってみました。
そうすると、5人のうち1人は、所得税の確定申告しているということになります。
また、平成27年 所得税の申告 約2,151万件のうち、平成29年度から追加したセルフメディケーション税制で知られる医療費控除の申告件数は、約700万件、ふるさと納税などで知られる寄付金控除の申告件数は、160万件でした。
最近では、会社員の方も所得税の確定申告される方が、増えてきているんですよ。
ということは、税務署への問い合わせや税務相談なども必然と増えてきます。
税務署の職員などの定員数は減少傾向の中で、納税者にストレスなく所得税の確定申告をしてもらい、所得税の納付をスムーズにしてもらうために、今後は、AIの力も借りていこうという流れになったというわけです。
AIとは、Artificial Intelligence(人工知能)の略称です。
コンピューターを使って、学習・推論・判断など人間の知能のはたらきを人工的に実現するための技術です。
納税者からの税務相談をAIが回答する?
今後は、AIに税務相談の回答をしてもらう?
一体、どんなふうにしていくのかしら?
AIに税務相談の回答をしてもらう流れは、まず、税に関する相談をしたい方が、メールやチャットで税務相談をし、その相談内容をAIが分析することにより、システムが自動的に最適な回答をしてくれるという流れになります。
「税務相談の自動化」ですね。
う~ん、でも、税務相談って個別事情もあって複雑な場合もあります。
AIでそんなことまで可能なのでしょうか?
実は、相談した方が税に関する相談と同時に、AIの回答に対する評価をすることになっています。
AIは、その都度学習していき、税務相談への回答内容がより適切な回答になっていきます。
結果、将来的に税務相談時間の短縮つながることになります。
■これまでの取り組み■
納税者が税務署にて直接話をしたい税務相談のうち、面接が必要な個別・具体的な相談については、事前予約制を取り入れることで、待ち時間の短縮に努めていました。
また、電話による税に関する一般的な質問・相談については、電話相談センターで対応していました。
これまでの取り組みが、AIに変わることで、税務署職員は他の仕事に手が回るようになりますね!
税務署の全体的なサービス向上にもつながるはずです。
海外では、すでにAIのよる「税務相談の自動化」は導入されています。
AIを活用した質問応答システム(シンガポール)
〇シンガポール税務当局のホームページ上では、納税者の質問に対して自動的に回答がなされるバーチャルアシスタント「Ask Jasmine」の試行版が導入されている。
〇「Ask Jasmine」はAIの自然言語を理解する機能及び質問と最も関連性の高い情報を検索する機能を活用したシステムで納税者が入力した質問を理解し、あらかじめ用意されている回答例のデータベースから最適な回答を探しだして提示する。
〇また、利用者が回答に満足したかどうかを確認するためのボタンも設けられており、利用者の反応のより当該回答が適切なものであったかをシステムが自ら学習し、回答の精度が向上していく仕組みとなっている。
日本も10年後には、ちょっとした税に関する相談であれば、このような「税務相談の自動化」が普通になっていることでしょう。
それでも、個々の事情により、税務署に税に関する相談を直接される方もいらっしゃいます。
ちょっとした税に関する相談がAIの「税務相談の自動化」で解消されることにより、複雑な相談内容に対して、税務職員が親身に対応して頂けることになることが期待できますね。
税金の滞納者への接触方法をAIが決める?
会社員は、毎月のお給料から所得税は天引きされています。
また、会社がしてくれる年末調整が確定申告の役割を果たしていますので、確定申告が必要になる要件に当てはまらなければ、所得税の税金の滞納なんてまずないでしょう。
税金の滞納は、所得税だけでなく、消費税、相続税なども含まれます。
税金の滞納に関しては、次のようなデータがあります。
納税コールセンターでの滞納整理状況(平成27年7月~平成28年6月)
催告対象者 82.5万者
納税コールセンターからの「税金を払ってくださいね」という催告に対して、全体の8割の方が税金の納付を約束したり、完全に納めたりしています。
残りの2割の方は、引き続き、催告していくことになります。
そこで、今後の対策として、税金の滞納者への接触方法にAIを活用することが望ましいと考えられています。
AIを活用して、①個々の納税者についての納付能力を判定するほか、過去の接触や滞納処分の状況などをみながら②優先着手事案の選定、③最適な接触方法(電話催告、文書催告、徴収官が臨場しての滞納整理等)および滞納整理方針がシステム上に的確に提示されるようになります。
なお、引き続き、滞納整理に当たっては、滞納者個々の実情に即しつつ、適切に実施していくことになります。
簡単にいうと、AIで税金の滞納者や徴収方法をあらかじめ3つの区分で判断するということですね。
①税金の支払いができる能力がある?
②滞納された税金を徴収する優先順位は?
③どのような方法で税金を徴収する?(電話する?手紙出す?直接行く?)
また、こちらについても、海外では、すでにAIのよる「滞納者との接触方法の自動判定」が導入されています。
滞納者との接触方法の自動判定(アメリカ)
〇米国では、滞納が生じた場合、まずは書面により納付のしょうようが行われるが、それでも滞納が解消されない場合には、①電話又は②対面(実地)により納税者と接触し、納付もしょうようや分割納付のための手続等を行うか、あるいは③滞納処分の執行を見合わせるかのいずれかの方法により事案の終結を目指している。
〇①~③のいずれの方法を採るべきかについては、滞納している税額、税目、経過年数に加え、破産しているか否かといった徴収の困難性なども考慮しつつ、過去の徴収事績の結果を統計分析も活用してシステムが自動的に判定している。
〇また、対面(実地)により納税者と接触することと判定された事案は、納税者の所得階級や滞納金額等、さらに地理的な条件を踏まえ、各地域を担当する徴収職員のグループへ自動的に振り分けられる。
日本も10年後には、AIを活用した税金滞納整理はもっと進んでいくでしょう。
滞納者の中で納税コールセンターから「税金払って下さいね」という催告されたにも関わらず、納税されていない2割の方が減っていくのかどうかは、まだわかりません。
徴収方法がAIであらかじめ判定されるので、納税コールセンターの負担が減るくらいでしょうか?
まとめ
平成29年6月23日、国税庁は、現時点で考えられる10年後の税務行政をイメージした「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を公表しました。
その中で、AIを活用した「税務行政のスマート化」は大きく2つあります。
①税に関する相談内容の回答
②税金の滞納整理方法の判断
平成31年には消費税10%の増税が予定されていますね。
消費税軽減税率制度やインボイス制度などを考えた場合、税務署職員のさらなる業務量の増加が見込まれます。
こうした状況の中で、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の進展、マイナンバー制度の導入など税務行政を取り巻く環境が変化しており、ICTやAI、マイナポータルなどを活用することが、将来的な対応として必要になってきているということです。
10年後はどのような世の中になっているのか分かりませんが、ここ数年の環境の変化は目まぐるしいです。
将来の世の中の情勢どころか、自分の将来についてすら正直きちんと考えたことがありません。
10年後というより、5年後、3年後の自分を取り巻く環境も一度考えてみたくなりますね。
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