副業に関心を持つ会社員が増えてきています。
国の方針である「働き方革命」で、退社時間を繰り上げる動きも相次ぎ、空いた時間を副業に回す人もいるとか。
企業でも、残業時間を削減したり、副業を容認したりする動きが進んでいますね。
実際に、ヤマト運輸や佐川郵便も「働き方革命」に沿って、週休3日制を取り入れ、副業OKな就業規則となりました。
このように副業OKな企業が増えてきている中、今まで確定申告をしたことがない方は、どのような副業をしたらどんな所得で申告した方がいいのかわかりません。
会社員の副業と確定申告のお話を簡単にさせていただきます。
会社員の私はどんなときに確定申告しなくてはならないの?
会社員の方は、基本、給与所得になります。
給与所得のある方は、勤務先である会社があなたに変わって1年間(1月1日~12月31日)の所得計算をし、所得税を給与天引きの形で納めてくれています。
これを「年末調整」といい、私達は会社から年末調整の結果である「源泉徴収票」をもらいます。
「源泉徴収票」とは、「うちの会社から出しているあなたの1年間の収入金額と所得税額はこれですよ」ということを証明する書類になります。
あなたの1年間の収入が、1ヵ所だけであれば、”年末調整=確定申告”になります。
では、会社員なのに、確定申告が必要になるってどんな場合なのかというと・・・
国税庁のHPでは、次のように記載されています。
確定申告が必要な人
(1) 給与の収入金額が2,000万円を超える(2) 給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
(3) 給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える
※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
(4) 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・ 工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払を受けた
(5) 給与について、災害減免法により源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた
(6) 在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税を源泉徴収されないこととなっている
よくいう副業の所得が20万円を超えなければ確定申告をしなくてもいいというのは、(2)と(3)のことからきています。
簡単にいえば
「給与所得、退職所得以外で各種所得(総収入金額ー必要経費)の合計額が20万円を超えたら確定申告を必ずしてね」
ということです。
ここで注意したいのが、「各種所得(総収入金額ー必要経費)の合計額」です。
これは、各種所得によって、何を総収入金額といい、どれを必要経費というのか、それぞれ定義が違うので、それぞれに国税庁のHPなどで確認が必要です。
私の副業は何の所得?
次に確認したいのは、自分の副業がどの所得区分になるのかということです。
アルバイトで従業員として働くなら「給与所得」です。
不動産で賃貸収入を得るなら「不動産所得」です。
動画投稿で広告収入を得るユーチューバーやアフィリエイト広告、フリマなどの収入は大抵の場合、「雑所得」に区分されます。
ただし、副業であっても人材・設備などをそろえて本格的に取り組み、継続的に収入が見込めたり職業として認知されたりしていれば「事業所得」となります。
副業 |
所得区分 |
課税方式 |
他社で役員、アルバイト |
給与所得 |
総合課税 |
ユーチューバー |
雑所得 |
総合課税 |
事業所得※ |
総合課税 |
|
FX取引 |
雑所得(先物取引) |
申告分離課税 |
不動産賃貸 |
不動産所得 |
総合課税 |
不動産売買 |
譲渡所得 |
申告分離課税 |
事業所得※ |
総合課税 |
※は継続性、営利性がある場合
ここにでてくる課税方式には、「総合課税」と「申告分離課税」とあります。
総合課税・・・各種所得金額を合計して所得税額を計算すること
例えば、事業所得がマイナスであれば、給与所得と合計して所得税額を計算するので、給与所得で先に納めている所得税が還付されるということがあります。
申告分離課税・・・他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納めること
例えば、FX取引でマイナスになっても給与所得や事業所得から引くことができません。
ただし、FX取引を幾つかしているのであれば、その中では合計できます。
確定申告する際には、自分の副業のマイナスが給与所得から差し引けるのかどうか確認してみましょう。
確定申告とは?
確定申告とは、国税庁のHPには次のように書かれています。
所得税及び復興特別所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税及び復興特別所得税の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続です。
では、実際にみましょう。
まずは、先ほどの源泉徴収票から確定申告書をかいてみましょう。
次に、あなたの副業である事業所得の総収入金額となる売上と必要経費が次の場合、どのような確定申告書になるのかみてみます。
総収入金額・・・240万円
必要費用・・・243万6000円
事業所得の金額は「総収入金額-必要経費」です。
よって「-3万6000円」です。
確定申告書では、所得税の金額が14万円と復興特別所得税が2,940円で所得税及び復興特別所得税の合計額が14万2940円になりました。
給与所得ですでに所得税を14万6600円納めているので、その差額の3,660円が還付になります。
20万円以下の副業は、確定申告はいらない?
副業の所得が20万円以下ならば、確定申告しなくてもいいというのは本当かというと、必ずしもそうではありません。
改めて国税庁HPの確定申告が必要な人の一部をみてみます。
確定申告が必要な人
(2) 給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
(3) 給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える
※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超えたら確定申告が必要ですよ」
と国税庁HPでは書いてあります。
ですから、確定申告が必要な人に当てはまらなければ、確定申告をする必要がありません。
しかし、副業などの他の所得があるない関係なしに、確定申告をする場合があります。
どんな場合なのか、一つ例をあげますね。
会社員Aさんは、自分がかけていた養老保険の満期がきて、満期金をもらいました。
自分で保険料をかけて自分がもらう保険の満期金は、「一時所得」です。
掛けていた保険料総額・・・100万円
一時所得の金額の算出式は
総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
一時所得の金額×1/2の金額で所得税の計算をします。
10万円×1/2=5万円
(2) 給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
会社員Aさんは、給与所得以外の所得は、保険の満期金が入ってきた一時所得しかありません。
ということは、この要件に当てはまらないので、会社員Aさんは確定申告の必要はないんです。
ここで、会社員Aさんは、今回、給与所得で先に納めてある所得税を医療費控除で還付請求したいと思っていました。
確定申告の必要がない一時所得は確定申告をしなくてもいいと思った会社員Aさんは、医療費控除の確定申告をして税金の還付を受けました。
その後、税務署から問い合わせがきました。
税務職員:「Aさん、保険の満期金の確定申告が抜けていますよ」
会社員A:「保険の満期金である一時所得が20万円以下だったので申告不要ですからしなかったんです」
税務職員:「確かに確定申告不要ですが、Aさんは医療費控除で確定申告していますよね。確定申告するなら一時所得も入れなくてはなりませんよ。」
会社員Aさんは、結局、一時所得の金額5万円を加えて確定申告のやり直しをしました。
医療費控除の金額が3万円でしたので、課税される所得が2万円増え、還付どころか逆に2000円の納税になりました。
会社員Aさんの正しい確定申告書は、次のとおりです。
確定申告をする場合は、所得、所得控除、先に納めてある税金など、1年間の所得に関することをすべて記載する必要があります。
1年間の所得は、確定申告するならプラスもマイナスもきちんと書きましょう!
ということです。
今回のように、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)が20万円以下で確定申告が必要でない人は、医療費控除の金額が各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)を超えないのであれば、確定申告をしない方が無難です。
20万円以下の各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)<医療費控除の金額
医療費控除は、必ずしなければならない申告ではなく、還付請求をしたい人がするという任意の申告になるからです。
医療費控除はしてもしなくてもいいですが、確定申告をするからには、すべての所得、所得控除、先に納めてある税金などを記載するのが必要です。
副業の確定申告を放っておくと・・・
副業の確定申告は、確定申告が必要な場合は必ずしましょう。
アルバイトで従業員として働くなら、勤めている会社側も「私はこの方に給与をこれだけ払っています」という申告をしています。
不動産で賃貸収入を得ている場合、例えば、不動産会社に一括借上げしてもらい、不動産会社から賃貸料をもらっているなら、不動産会社は「私はこの方に家賃をこれだけ払っています」と申告をしています。
もらう側、払う側は、表裏一体です。
さらに、マイナンバーの導入で申告漏れを把握しやすくなっています。
無申告のまま放置していると、追加の税負担が生じる可能性がありますよ。
副業は本当にしてもいいの?
副業支援のNPO「二枚目の名刺」の調査によると、平成29年1~2月の時点で61.9%の企業が副業を禁止しています。
理由は、「本業に専念してほしい」「悪影響が出る」です。
副業をしてもいいかどうかは、まず、勤務先の就業規則を確認しましょう。
「副業には会社への届け出が必要」など就業規則があるのに無届だと、場合によっては就業規則違反で処罰の対象になります。
ましてや「副業禁止」なのに、無断で副業をしていればなおさらです。
また、副業で労働時間が増え、健康を害しても元も子もありません。
副業はやりがいを感じ、元気にやることが大切ですね。
まとめ
私達は、社会の中で生きています。
自分が気持ちよく収入を増やしていくためには、税金のことだけでなく、社会のルールも踏まえて、正しい行動を心がけたいです。
会社員が副業をするときの注意点は次の3つです。
②確定申告が必要か?どんな所得で申告するのか?を確認
③健康に配慮すること
副業がOKの場合、副業の種類によって所得税の課税の扱いも変わりますので注意が必要です。
確定申告の際に、どのようにしていいのかわからない方は、最寄りの税務署で確認したり、税理士に相談してみるといいですよ。
副業の話ではないですが、我が家では、以前、家を建て直した際、隣との地境をキチンとするために、土地の交換をしたことがあります。
お金のやりとりは、等価交換ということで一切していません。
その年に税務署から「譲渡所得の確定申告」の書類が届きました。
実は、税務署では、数か月に1回、法務局で土地の登記の確認もしています。
ホントに、表裏一体です(笑)
当時は、確定申告をしたことがない専業主婦時代でしたので、主人のかわりに税務署で、何度も行った記憶があります。
結局は、「土地の交換なので、譲渡所得は0円です」という申告をするだけなんですけど、このような場合でも確定申告は必要だということです。
実際に、副業をされる会社員の方は、①本業の就業規則を確認、②ちゃんと確定申告、③健康第一を守って頑張っていきましょう!
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